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単にフォトリーディング・ホール・マインド・システムの各ステップを知っているだけでは、十分ではありません。生活の中で実際に使いながら、テクニックを磨いていくことが肝心です。そして、疑問がわいてくるのは、実はそのときなのです。
もっとも多い質問が、「私のやり方って、これで合ってるの?」というものです。その問いに対するはっきりとした答を得るためには、各ステップを、説明に従ってひとつひとつやってみるしかありません。本書に書かれている説明は、何度も改良され、洗練され、これまで何十万という人々に提供されてきたものです。もし、納得のいかないところがあったら、その章を読み直し、説明に忠実に従ってもう一度やってみてください。
フォトリーディング・ホール・マインド・システムのステップはいずれも、それを使ってみることで、結果が出る作業です。たとえば、仕事のレポートをプレビューしたとすると、三分以内で、レポートの構成や書式、キーワードを把握し、そしてさらに時間をかけて読むべきかどうかが、わかります。あなたは、使ったテクニックで、期待した結果を得られましたか? そうでなかった場合、それには、ちゃんと理由があります。
講座の受講者たちの中にはときどき、読んだり聞いたりした内容を、自分なりに解釈し、さらにまた違うかたちで実行する、という人がいます。あなたは各ステップを説明どおりに行なっているでしょうか? ひとつのステップで期待した結果が得られなかったとしても、たいていの場合は、最終的なゴールに向かって正しい方向に進んでいるというヒントは出てきます。「うまく行っている」という兆候が感じられるものがないかどうか、よく注意してみてください。少しでも兆候があれば、方向は間違っていません。
説明に従っているにもかかわらず、どうしても結果が得られないという場合は、新しいスキルを身に付けることに対する、アプローチの方法に問題があるかもしれません。この章では、フォトリーディング・ホール・マインド・システムを使う際の適切な心構えについて解説したいと思います。これから紹介するものの見方や考え方を試してみると、あなたは自信を持って成功できることがおわかりになるでしょう。
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フォトリーディングのテクニックはどうすれば早く身につけられるでしょうか? |
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小学校高学年ぐらいから、私たちは書かれている言葉をいちいち声に出さなくても、瞬時に理解できるようになります。それなのになぜ、相変わらずひとつひとつの言葉を音に置き換えて読まなければいけないように感じてしまうのでしょうか? 学校で教えられた読書法が、ちょっとやそっとでは外せない補助輪を取り付けてしまったのです。フォトリーディングはそれを外すだけでなく、そのあとにロケットを取りつけてしまいます。
新しいスキルを学ぶということは、それまで長い年月をかけて築き上げてきた習慣に逆らうということでもあります。だから、自分の能力に対して寛容になることが大切なのです。新しい知識を学ぶ作業は、ときにフラストレーションを生みます。
そこに「グレムリン」がいたら、なおのことです。
グレムリンとは、マイナス思考をつくり出し、やる気をくじく悪い習癖です。リチャード・カーソンの『Taming Your
Gremlin(あなたのグレムリンを飼い慣らす)』によると、グレムリンは小さくて扱いにくい厄介な生き物です。
グレムリンにはどのように対処すればよいのでしょうか。
カーソンによると、グレムリンは根絶しようとすると、ますます大きくなるそうです。「敵対するのではなく、遊んであげることが重要だ」と彼は言います。愛しているうちに、なくなってしまうのです。
具体的に言うと、「NOPS」の法則を使うようにします。つまり、問題に気づき(Notice it)、認め(Own it)、楽しみ(Play
with it)、そして共存する(Stay with it)。NOPSの方程式を使えば、どんなフラストレーションにもうまく対処でき、それが学習の障害になるのを防ぐことができます。
N(Notice your feelings)<自分の気持ちに気づく>
気持ちは、正しいとか間違っているという評価の対象になるものではありません。それは、ただ感じるものです。
0(Own your experience)<問題があることを認める>
自分がフラストレーションを感じていることを認めましょう。その存在をきちんと認識することが、問題解決への第一歩となります。フラストレーションがあることを認めなければ、問題はいつまでたってもなくなりません。
学習に行き詰まったとき、自分を元気づける方法はいろいろあります。たとえば、古い諺にひとひねり加えてみましょう。「最初にうまくいかなくても、[訳注:「何度も繰り返しやってみよ」のかわりに]それは当たり前。もう一度やってみよう」というのはいかがでしょう。
P(Play with your experience)<経験を楽しむ>
あえて「きりもみ降下」に突入し、自分がどうなるかを見るのです。混乱の中へより深く落ちていきましょう。そして自分に問いかけるのです。すると、最初は、混乱がより大きくなるかもしれません。でも、いったん子供に返ることです。子供はすべてをゼロから学び、それを恥ずかしいこととは思いません。
S(Stay with it)<共存する>
私たちはフラストレーションを抱えると、つい目標の達成を投げ出すきっかけにしがちです。そうではなく、その感情を、「さらに前進せよ」というサインだと思いましょう。そうすれば、きっと新たな成果が生まれはじめます。
このNOPSの法則を使えば、フォトリーディング・ホール・マインド・システムは楽しく、しかも早く学べるプロセスとなります。ちょうど、歩行を始めたばかりの幼児の心境です。転ぶことは、怒られることでもなければ、恥ずかしいことでもありません。それは、立ち上がって、歩き方を修正し、もう一度やってみようというサインなのです。NOPSの法則を使えば、あなたは自分という最高のサポーターを得て、テクニックをどんどん上達させていくでしょう。
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フォトリーディングの最中に、どのように自分の能力を評価すればいいでしょうか? |
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フォトリーディングの最中には、その能力の評価を従来の方法で行なうことはできません。というのは、意識の介入を最低限に食い止めることがもっとも重要だからです。フォトリーディングの最中に、「ちゃんとできているのかな?」と思った時点で、もう遅いのです。あなたは、ちゃんとできてはいません。
これは、眠っている人に「眠ってるの?」と聞くことと同じです。質問するという行為そのものが、いままさに行なっている活動から、質問された人を引っぱり出してしまうのです。その行為は、活動を中断させるだけでなく、活動の結果自体にも悪い影響を与えてしまいます。
脳が脳自身を検証するときは、いままでの実験スタイルは通用しません。実験者(あるいは観察者)が同時に被験者でもある場合、いかなる実験もうまくはいかないものです。脳は、自分自身の実験結果に、必ず何らかの影響を与えます。ですから、適切にフォトリーディングしながら、同時に適切にできているかどうかを考えるということは、不可能なのです。フォトリーディング中は、その行為に自分を没頭させることが必要になります。そうすることで、自意識や自己評価といった意識の介入にじゃまされることなく、フォトリーディングの作業が遂行されるのです。
効果的なフォトリーディングを行なうために、フォトリーディングの間はその流れに身を任せましょう。そして終わった後でその体験を振り返り、次の点をチェックしましょう。
●肉体的にも精神的にもリラックスして、高速学習モードに入っていたか?
●「集中」と「読書の目的」を、アファメーションしたか?
●ゆったりと安定した呼吸を維持し、意識上でリズムを取りながらテンポ良くページをめくっていたか?
●ブリップ・ページ、もしくはページの四隅や余白部分を意識しながら、フォトフォーカス状態を維持できていたか?
●終了のアファメーションを行なったか?
これらの問いにイエスと答えることができれば、あなたのフォトリーディングはうまくいったと言えます。フォトリーディングの効果を確かめるためには、フォトリーディングのあとで何らかのテストを行なうとよいでしょう。テストには、自分一人で行なうものもあれば、第三者によって行われるものもあります。
本書では、世界中のフォトリーダーたちから寄せられた体験談を随所で紹介してきました。彼らの体験談は、フォトリーディングが自分もうまくいっているかどうか判断するために参考にできます。また第7章の最後に紹介している「五日間テスト」も、フォトリーディングの効果を判断するのに有効です。
フォトリーディング・ホール・マインド・システムを学びはじめたばかりの段階では、「これならできる」と思えるものにひとつずつ挑戦していくことをお勧めします。確実にこなすことで自信をつけながら、少しずつ上のレベルに挑戦していきましょう。これからあるエピソードを紹介しますが、まだ自分はそのレベルまで行っていないと思う人は、自分に合った方法を用いてください。
ドイツのあるフォトリーダーが、ニュース番組への出演を依頼されました。番組でフォトリーディング・ホール・マインド・システムを紹介するので、その実験対象になってほしいと言われたのです。インタビュアーや制作クスタッフが好奇心に満ちた目で見つめる中、彼女は提供された本の中から一冊を選んでプレビューし、フォトリーディングした後、脳への問いかけをして、その日の作業を終えました。そして翌日、スーパーリーディング、ディッピング、そしてマインド・マッピングで、本のアクティベーションを行ないました。こうして全部で四五分間の作業を終えた彼女は、カメラの前で内容についての具体的な質問を受けました。そして、そのひとつひとつに正確に答えることができました。
ミュンヘンで講演したとき、私は聴衆にこの五分間のニュース・ストーリーのビデオを見せ、出演したフォトリーダーにそのときの体験を語ってもらいました。彼女は「そんなことができるなんて、思ったこともなかったのです。でも、出演の依頼が来たとき、私は『いま重要な選択を迫られているんだな』と思ったんです。これから一生、自分にはそんなことできっこないと思って逃げ回るのか、それとも、ここで思いきって挑戦して、できるかできないかをはっきりさせるのか……」。そのとき、聴衆の中のある男性が、「自分にはそんなことができるとはとても思えない」と言いました。たしかに、そうしたメンタリティーでいる限り、彼がそれをやってのけることはないのかもしれません。
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フォトリーディングは誰でもできるようになるのでしょうか? |
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私たちはこれまで、何十カ国もの国で、さまざまな言語で、フォトリーディングを教えてきました。受講生のバックグラウンド、読書能力もばらばらです。年齢は、下は九歳から上は八六歳までの人々です。その結果わかったことは、成功するかどうかの決め手は、どんな場合でも、学習に対する心構えにあるということです。
理想的なのは、断固とした決意に基づく粘り強さです。この心構えは、「初心に戻る」という素晴らしい言葉で表現することができます。「初心に戻る」ことが、私たちを読書の新しいパラダイムへ導いてくれるのです。
フォトリーダーが陥る大きな罠のひとつが、「すでに読み方を知っている」という事実です。いままでの長年にわたる訓練によって、私たちは、読むスピードや理解の仕方に関して固定観念を植え付けられています。フォトリーディングは、そんな固定観念を捨てて、文書を読むことに対して別の角度からアプローチしろ、と迫るのです。
まったく新しいパラダイムのみが、締め切りのプレッシャーや書類の洪水を乗り切る手段となります。ときどき、フォトリーディングを学びはじめたばかりの人が、「『読む』という意味が、根底からひっくり返される感じだ」と言うのを耳にします。
初心を忘れなければ、やがて必ず新しい選択肢が見えてきます。この考え方は、古く禅の思想にまでさかのぼります。禅の大家、鈴木大拙は、「初心には多くの可能性が宿るが、熟練者の心にはわずかな可能性しかない」と言いました。そして彼はこう続けます。
「初心を忘れてはならない。何も所有せず、すべては移りゆくものだということを知ること。現在の姿は、ほんの束の間のものだということを悟ること」
混沌の中で、あらゆるものが常に変化し続けている今日、私たちは何度も繰り返し初心者にならざるを得ない世界に生きています。読書について教えられてきた常識を見直すことは、初心に戻ることのほんの一例にすぎません。眩暈がするぐらい急速に、ものごとが変わっていく現代、このような状況は今後もっともっと出てくるでしょう。
とはいっても、フォトリーディングを学ぶためには禅を研究しなければならない、というわけではありません。ルールをマスターして専門家となることを目指すときもあれば、あらゆることに疑問を投げかけることが必要なときもあります。
フォトリーダーは、その両方の姿勢を兼ね備えていなくてはなりません。私たちは、論理的な思考を行なう「意識」がもつ、目標を設定する能力を重視しています。それと同時に、「意識外」がもつ、目標達成のために独創的な方法を見つけ出す能力も重視し、双方をバランスよく存分に活用していくのです。
フォトリーディングを用いることで、あなたは従来の読書スキルを維持しながら、新しいツールをも手にします。印刷文字と新しい友好関係を結ぶだけでなく、猛スピードで変わっていく世の中への対処法をも獲得するのです。初心を忘れない大人として、あなたは学び続けることの喜びを再発見するでしょう。
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システム全体が身につくまでには、どのくらい時間がかかるでしょうか? |
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車の運転をする私は、飛行機の操縦を学んだときには、親近感と違和感の両方を体験しました。フォトリーディングを学ぶあなたも、いままでの読書と比較して、類似点と相違点の両方を感じると思います。似たようなことを学ぶのは簡単ですが、未知のことを学ぶのには時間がかかるものです。
なにか初めてのことを学ぶときには、それがどんなものであっても、学習の過程には通常四つの段階があります。学習にかかる時間は、この四段階をどのように進んでいくかによって変わってきます。各段階を、フォトリーディングの場合に当てはめて説明していきましょう。
あなたはまず、手をつけていない書類の山を見ながら、「いつも情報処理がうまくできていない」と心配になります。でも問題の根本的な原因がわかりません。自分の人生にはうまくいっていない問題がある。でも何をどう直せばよいのかがわからないのです。
この段階では、不安や恐れを感じるのが普通です。ときにそれは、問題解決に対する期待感を伴うこともあります。これが学習における第一段階、「無能であることを、自覚できない」段階です。
次に、あなたはいまの自分の読書スキルが、あまり役に立ってないということに気づきます。実はそれが、情報処理がうまくできないという不安の原因だったのです。ここでフォトリーディングの存在を知ったあなたは、いくつかのテクニックを実際にやってみます。いままで体験したことのない、まったく新しいテクニックでした。あなたは「何がうまくできないか」を自覚し、それに対して「何をすればよいか」もわかったのに、そのテクニックをうまく使いこなすことができません。これが学習における第二段階、「無能であることを自覚する」段階です。
次に、大きな飛躍を遂げます。フォトリーディングを行なって、みごとに結果を出すのです。でもそのテクニックは、まだ生活の一部とまではなっていません。何かを読むときには、この新しい方法を使うようにと、いちいち自分に言い聞かせる必要があります。これが学習における第三段階、「有能であることを、自覚できる」段階です。
最後に、あなたはとうとう熟練の域に入ります。いまや、リーディングをするときは、自然にフォトリーディングを使うようになりました。フォトリーディングのテクニックは、呼吸するのと同じぐらい、当たり前になったのです。あなたは、印刷文字との新しい関係だけでなく、新しい人生をも手にしたのです。手つかずの書類の山はなくなり、読書の目的は、常に達成されるようになりました。この段階は「有能であることを、自覚しない」段階、すなわち「熟達」した段階です。
学習は、自分の無能を自覚するという行為を通して行われます。自分は重要な知識、あるいは必要な技術を欠いている、ということを知ることです。当然のことながら、それにはある種の感情が伴います。混乱、フラストレーション、恐れ、そして不安です。
私のアドバイスはとてもシンプルです。それらを全部楽しみましょう。フォトリーディングを学ぶ過程でどんなことが起こっても、それを受け入れるのです。どんな感情がわいてきたとしても、それは間違った感情ではありません。すべての感情には、目的があります。混乱は好奇心を生み、混沌は解明へとつながっていくのです。
私は、フォトリーディング講座の受講者たちが、そうした感情を体験しているのを見るのが大好きです。人々が「混乱してきた」と言うと、私は大喜びします。「行き詰まった」と言うと、私はすぐさま彼らを混乱させるようにします。一見無謀に見えるこの行為には、きちんとした理由があるのです。混乱は、「熟練」に向かって前進するためのひとつのステップです。それは、学習という行為に深く入りこんでいる証拠なのです。
一方で、従来の考え方に固執したまま、何かを決めつけて問題に対処しようとすると、行き詰まってしまうのです。すなわち「学習による無力感」を感じるようになるのです。
残念なことに、私たちの教育システムはしばしば、私たちをフラストレーションへの流れの方に引き込んでしまいます。従来の教え方では、混乱することは失敗であり、フラストレーションは無能と見なされます。これでは読書に喜びを感じることはできず、学ぶという行為はそこでストップしてしまいます。
フォトリーディングを学ぶ過程でわいてくる感情は、どんなものでも、間違った感情ではありません。どんな気持ちも、いかなるレベルの混乱も、抑え込んだり無視したりしないでください。自分を他人と比べたくなるときもあるかもしれません。「みんなちゃんとできているのに、どうして私だけできないんだろう、」そんな気持ちがわいてきたら、その感情をきちんと認識したうえで、そのまま放っておきましょう。そして、「有能であることを自覚する」段階が、もうすぐそこまで来ていることを自分に言い聞かせましょう。
読む能力は、自己像(セルフイメージ)と深く関わっています。私たちは自分に対するイメージを、しばしば「学習する際に、いかに効率的に学べるか」という観点から形成します。そして多くの場合、学習力は読書力と密接に結びついているのです。その結果、多くの人が、あまりに簡単に「自分は読むのが下手だ」と考え、「自分の能力は劣っている」と決め付けているように感じます。そうした気持ちは、すぐにセルフイメージの低下につながってしまうのです。
学習の過程での気持ちのアップダウンを素直に受け入れましょう。それを自然な美しいダンスだと思いましょう。そうすることで、あなたは新しいスキルを学びやすくなると同時に、熟練への時間を短縮できるようになるのです。
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フォトリーディング・ホール・マインド・システムを使うときは、どのような心理状態でいるのがよいのでしょうか? |
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読書に完全に没頭したときを考えてみてください。自分がどんな状態にあったかをよく思い出してみましょう。そのような状態にあるとき、あなたは特別な努力もせずに、非常に効率的に文書を読んでいるはずです。
そのときの状況を振り返ってみましょう。
あなたは夢中で小説を読んでいたかもしれません。あるいは、ラブレターに読み入っていたかもしれません。もしくは、殺人事件の謎解きに没頭していたかもしれません。いずれにしろ、そのとき奇妙なことが起こっていたはずです。
あなたは、自分の周りで起こっていたことにまったく気づかないでしょう。まるで、あなた自身の内部にわき起こってくるイメージや感情が、目の前にある何よりも重要であったかのようです。そのときには、もはやあなたは文字を読んではいません。もうひとつの現実へと踏み込んでしまっていたのです。目の奥で起こっていることのほうが、目の前にあるものよりもずっと重要になっていたのです。
こうした体験を説明するときの人々の言葉は、驚くほど似通っています。たとえば、「時間も場所も忘れて読んでいた」「ページの上の文字をまったく意識していなかった」「心の中で映画を見ているようだった」「言葉が自然と頭に入ってきた」「ページの上の言葉が心に流れ込んできた」という具合です。
「フロー(流れ)」。
これは、この没頭している状態を表現するのに、とても便利な言葉です。この体験の特徴――滑らかさ、無理のなさ、柔軟さ、没頭、集中、リラクセーション、高い生産性――
を、よく表現しています。
この体験は「意識変容状態」のような印象を与えますが、決して異常な状態ではありません。人間は何百年も前から、こうした「フロー体験」を認識し、それをさまざまな言葉で表現してきました。老子の『道徳経』は、努力が一切必要ない行為、「無為」について言及しています。生理学者アブラハム・マスローは、「至高経験」について同じような説明をしています。
シカゴ大学の心理学者、ミハリ・チゼンミハリィ博士は、フロー体験がだれにでも起こり得ることを証明しました。博士は、事務員、流れ作業の現場作業員、スポーツ選手、エンジニア、そして管理職にあるビジネスマンを対象に、この状態の研究を行いました。その結果、フロー状態は、催眠や瞑想状態に非常に似ていることがわかりました。
文書を読むときに、スイッチを切り替えるように瞬間的にこのフロー状態に入ることはできないものでしょうか。非常に集中した、それでいてまったく無理のない態勢で、滑らかに、すばやく、効果的に作業が行なわれる状態。リラックスしていながら、同時に能動的で、高い集中力を発揮できる状態。こうした状態にあれば、文書を読むことなど簡単です。専門的な技術書も、小説のように軽く読んでしまうでしょう。
フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、まさにそのスイッチです。
フロー状態は、私たちに生まれながらに備わっている能力です。フォトリーディングにより、没頭するという状態を、偶然の産物ではなく、自らつくり出せるようになるのです。この状態は、単なるまぐれでもなければ、体外離脱体験のような特異な現象でもありません。自然に起こり得る状態であり、文書を読むたびに活用するよう習慣づけることができます。
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加速学習とフォトリーディングには、どんな共通点があるのですか? |
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私たちは子どものとき、ある非常に重要なスキルを学ぶ際に、自然に加速学習を実行しています。「歩くこと」と「話すこと」です。大人になってから学ぶことの中には、もはや、それに匹敵するほど複雑なものはありません。
長年の乱用、誤用、あるいは不使用によって、少なからず損なわれている可能性は大きいとしても、子どものときからずっと、加速学習のスキルを持ち続けているのです。ですから、私たちはただ、その学習スキルをもう一度磨き直して、文書を読む際に活用すればいいのです。
加速学習の研究における第一人者は、ブリガリア人の心理学者、ゲオルギ・ロザノフ氏です。ロザノフ博士は、私たちが脳の機能全体の一○%も使っていないことを主張する多くの論文を発表しています。そして、人間は秘められた資質、つまり脳の残りの九○%の能力を引き出す方法を学ぶことができるとし、一つの学習システムをつくり上げました。
ロザノフ博士の方法は、脳の両半球をチームとしてバランスよく働かせます。左脳と右脳が同時に働くとき、私たちの学習能力は飛躍的に向上します。
ロザノフ博士によると、人間は膨大な量の情報をいとも簡単に吸収して、必要なときにいつでも利用できるといいます。これこそまさに、この情報過多とドキュメントショックの時代を生き抜くためのスキルです。
ロザノフの学習方法の中核をなすのは、「解読」「コンサート」「活性化」の三つのステップです。この三つのステップは、フォトリーディング・ホール・マインド・システムのステップと対応しています。
解読とは、「ざっと目を通すこと」。学習の対象となるものに、一通り軽く目を通すことです。
コンサートのステップでは、生徒はリラックスした集中状態に入り、学習内容を浴びるように取り込みます。多くの場合、学習内容は、BGMにクラシック音楽を流しながら、物語や劇の形で提供されます。
そして最後に、生徒は学習した内容を活性化します。つまり、それを意識上で認識し、活用するのです。活性化のステップは、ドリル練習や機械的な暗記の作業ではなく、グループディスカッションやゲーム、寸劇などの方法で行われます。
関連性が見えましたか?
ロザノフの解読→コンサート→活性化は、私たちのプレビュー→フォトリーディング→アクティベーションです。フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、ロザノフの手法を多数取り入れており、授業での指導法においても、彼のアイデアは大いに参考にされています。
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私は意識的・論理的な思考に大きく依存する傾向があります。どうすればよいでしょうか? |
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一九八○年代のはじめ、ハーバード大学の心理学者、ハワード・ガードナー氏が、ロザノフの研究をさらに発展させる概念を発表しました。ガードナーは、私たちの学校教育は、主に二つの知性に対して行われていると主張しました。ひとつは、言語に基づく知性。もう一つは、論理に基づく知性です。ガードナーは、これでは知性全体のほんの一部しか対象にされていないとし、知性には以下のすべての能力が含まれると主張しました。
●言語学的知性…言葉によって表現する能力。
●論理的・数学的知性…数的シンボルによって表現し、論理的な規則に従ってそれらのシンボルを操る能力。
●音楽的知性…メロディー、リズム、ハーモニー、色調などの非言語的「言語」を理解し、扱う能力。
●空間的知性…見える世界を正確に知覚し、頭の中や紙面に再現する能力。
●肉体的・運動感覚的知性:自己表現や学習の手段として肉体を使う能力。
●対人関係的知性…他人の気持ちや欲求を察し、理解する能力。
●心的知性…自身にとっての価値を見極め、孤独の中で洞察する能力。
●自然主義的知性…自然界におけるパターンを見分け、さまざまな事象を明確に理解する能力。
自分が何かを完璧にマスターしたときのことを思い出してください。
そのとき上の八つの知性のうち、どれが使われたかを考えてみましょう。あなたはすでに、自分がどうすれば効率的に学習できるのかを知っているはずです。自分の強みを積極的に活用しましょう。
ここで、八つの知性すべてに、直観をプラスして、文書を読む際に活用することを考えてみてください。フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、まさにそれを行なうのです。あなたの知性のすべてが、読書に注ぎ込まれるのです。こうして見ると、フォトリーディングは読み方の手法ではなく、学習の手法です。あらゆる事項に対応できる、学習テクニックなのです。
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アクティベーションはどのようにして、脳の巨大な処理能力を引き出すのでしょうか? |
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『頭脳の果て~アインシュタイン・ファクター』の著者、ウィン・ウェンガー博士によると、無意識における記憶の許容量は、意識上の記憶能力の一○○億倍だそうです。そしてこれが、アクティベーションにおいて私たちが引き出そうとしている脳の能力なのです。
名前を思い出そうとするときしばしば起こる「喉まで出かかっている」という現象は、アクティベーションの一例です。
あなたも次のような場面を経験したことがあるでしょう。
パーティー会場で見たことのある顔を目にします。しかし名前が思い出せません。あなたは少しの間、一生懸命名前を思い出そうとします。その行為は脳の神経回路を刺激します。すると数分後、突然、名前が思い浮かぶのです。それはたいてい別の人と話をしている最中など、意図的に思い出そうとはしていないときです。脳は、最初にその人の名前を知ったときに開かれた神経回路を刺激することによって、その記憶を再び創り出したのです。
アクティベーションはより大きなスケールで行なわれることもあります。
私の知り合いの作家は、瞑想を行います。瞑想は、私たちがフォトリーディングのときに必要とする「リラックスした集中状態」を得る、もうひとつの方法でもあります。彼は、「良いアイデアは瞑想中に浮かぶ」と言います。特に、進行中の作品の内容や構成に行き詰まっているときに有効だそうです。また本の全体的な筋は、しばしば瞑想中に決まるということです。
さまざまな分野のアーティストたちが、同じような体験をしているようです。アメリカの著名な作曲家のひとり、アーロン・コープランドは、曲づくりは心の中に自然に生まれてきた主旋律を音符に置き換える作業で始まる、と言っていました。その著書『What
to Listen for in Music(音楽の中で、何を聴くか?)』の中で、彼は次のように書いています。
作曲は主旋律から始まる。そして主旋律は天からの贈り物である。作曲家はそれがどこから来るのか知らず、それをコントロールすることもできない。手が自動的に書きはじめるのだ。作曲家が常に五線紙を持ち歩き、思いついたときにいつでも書き込めるようにしているのは、そのためである。
私たちは偉大な作家や作曲家でなくても、脳の奥深くに秘められた豊かな創造力を引き出すことができます。ただリラックスした集中状態に入って、求める情報が意識上に浮かび上がってくるよう、やさしくリクエストすればよいのです。
自分で自分のじゃまをせずに、脳に思う存分フォトリーディングをさせてあげることが、成功の秘訣です。 |
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一生懸命努力すればうまくなりますか? |
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フォトリーディングは「逆説の塊」のように見えるかもしれません。実際、そのとおりです。これから私が言うアドバイスに耳を傾けてみてください。
読書からより多くの情報を得るには、読書時間をより少なくすること。よりたくさん情報を得るには、意識上で理解しようとしないこと。効率的に読みたいなら、一生懸命努力するのをやめて、楽しむこと。欲しいものを手に入れるには、結果を求めないこと。
あるセミナーで、私は、フォトリーディングのこの逆説的な性質を、見事に味方にした女性に出会いました。フォトリーディングの学習を始めてすぐに、彼女の読解テストの成績は90%台に達し、そのレベルをそのまま維持しました。私は彼女にその理由を尋ねてみました。すると彼女はこう答えたのです。
「私はただ最初に、いいところを見せようと思わない、ということを決めたのです。うまく行けばそれでいいし、行かなくても別にかまわない。私にとって大切なのは、新しい読み方を体験することだけなのですから……」
これまでフォトリーディングを教えてきた中で、成功するフォトリーダーは、必ず彼女と同様の姿勢を持っていることに気づきました。フォトリーディングを「一生懸命努力してうまくなろう」とする人は、しばしば自分で自分に課した責任の重さに押しつぶされてしまいます。このシステムがうまくいくかどうかを、何がなんでも証明しなくてはならないという義務感を背負ってしまうのです。これは、足し算の仕方を習う前から、期末テストを受けたがるようなものです。しかも、それでいて「自分は算数が苦手だ」と嘆くのです。
最初からフォトリーディングのすべてを信じる必要はありません。少々懐疑的になっても問題ではありません。いかなる前例や証拠も、あなた自身が出した結果に匹敵する説得力は持たないものです。
自分にフォトリーディングを試すチャンスを与えて、オープンな気持ちでその結果を見てみましょう。成功の条件は、オープンマインドでいることです。
ぜひ、素直な気持ちで、フォトリーディングを体験してほしいと思います。
混乱を受け入れて、グレムリンを手なずけ、その過程を楽しむのです。
皮肉なことに、一生懸命になるのをやめたとたん、直観が目覚め、生まれながらの学習能力が花開くものです。
成功や失敗を気にしなくなったとき、私たちは求めるものを手にするのです。 |
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必要とするレベルの理解にはいつ到達できるのですか? |
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フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、文書に何度も目を通すことを基本にしています。まず最初にプレビューを行ないます。それに続き、フォトリーディング、スーパーリーディングとディッピング、高速リーディングを行ないます。
理解は、段階を経て深まっていきます。プレビューによって、私たちはまず文書の構成を把握します。そしてシステムの残りのステップを使って、その土台の上に理解を積み重ねていき、最終的に目的に適ったレベルまで到達するのです。
おそらく、なかなか完全な理解まではいたらず、じれったく感じる人もいるかもしれません。読むことの「おいしところ」をすぐに手にできないもどかしさです。私のアドバイスは、その気持ちにNOPSの法則で対応し、何が起こるかを待ってみる、ということです。
たとえば、こんなエピソードがあります。
ある授業に、博士課程に在籍中の学生がいました。彼は博士論文のために、二万ページもの資料を読まなければなりませんでした。その課程を履修している学生のほとんどは、六カ月から九カ月かけて課題図書を読み、論文を書き上げるとのことでした。
彼はまる一週間をかけて、プレビューとフォトリーディングを行ないました。そしてその翌週、読んだ本をアクティベーションして、論文を書こうとしました。ところが、何も出てこないのです。彼は、本の内容は理解できているはずだと思っていました。一週間を無駄にしたと感じながら、彼はいったんすべてを中断することにしました。
彼はさらにその翌週、「初心」に帰る試みをしました。そしてもう一度、アクティベーションをしたところ、驚いたことに、すべてが理解できたのです。論文執筆はすらすらと進み、彼はみごとAを取って課程を修了したのです。彼が投じた時間は、最初に作業を始めてからたったの三週間でした。
一回目のアクティベーションは実際、無駄だったのでしょうか? それとも、それは最終的な結果を得るために不可欠な熟成期間だったのでしょうか?
フォトリーディング講座のある受講者が、自分の体験についてこんなふうに語っています。
「あるとき私は、フォトリーディング・ホール・マインド・システムを使うと、読書に余分な作業が加わり、それだけ余計に時間をかけることになると気づいたんです。当然、抵抗を感じました。そのまま読みながら理解していけば済むことなのに、この新しいシステムを使うと、アクティベーションで読解に達する前に、プレビューとフォトリーディングの時間を取らなくてはならないのです。私の素直な反応は、なぜわざわざそんなことをするんだ、という気持ちでした。
私は常々子どもたちに、よい結果を出すためには、事前に少しだけ余分な時間を割いて予習をしなければならないと言ってきました。私は、子どもたちにそんなアドバイスをしておきながら、自分では実行していなかったんですね。
私はやがて、事前に投資する数分間が、あとから大きな成果となって返ってくることに気がつきました。プリビューとフォトリーディングにたった五分割くだけで、報告書を読む時間が何時間も節約できるのです。従来のやり方では読むのに二十時間かかっていた本が、一〇~一八時間も短い時間で読めるようになったのです」
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| この章で学習したことを復習してみましょう。 |
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●NOPSの法則――気づく、認める、楽しむ、共存する――で、学習の妨げとなるフラストレーションが克服できる。
●フォトリーディング・ホール・マインド・システムを使うときは、「初心に帰る」ことが大切である。
●人は新しいスキルを学ぶとき、四つの段階を経る。
●学習過程において、混乱することは、当たり前の状態である。
●フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、意識のフロー状態を利用する。
●フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、ロザノフ博士の加速的学習をモデルとしている。
●フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、ガードナー博士の言う八つの知性のすべてを使って、読むことを多次元的に行なう。
●フォトリーディングでアクセスする巨大なデータベースは、意識上のデータベースの、一○○億倍の容量を持つ。
●最終的な理解は、いくつもの段階を経て達成される。逆説的に思えるかもしれないが、目標を達成するためには、いったんそれを忘れることである。
フォトリーディング・ホール・マインド・システムは、必ず機能します。その成果を手にするためには、実際に使ってみることです。
フォトリーディングの効果がいかに簡単に得られるものかを自ら体験すれば、あなたは自分自身の成長にとって意識外の部分が、いかに重要な役割を占めるかを実感することと思います。
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